正岡子規へ送りたる句稿 その二十八



句稿 二十八  〔三十句〕

明治三十一年一月六日(木)

1327 行く年や猫うづくまる膝の上
1328 焚かんとす枯葉にまじる霰哉
1329 切口の白き芭蕉に氷りつく
1330 家を出て師走の雨に合羽哉

1331 何をつゝき鴉あつまる冬の畠
1332 降りやんで蜜柑まだらに雪の舟
1333 此炭の喞つべき世をいぶるかな
1334 かんてらや師走の宿に寐つかれず
1335 温泉の門に師走の熟柿かな
1336 温泉の山や蜜柑の山の南側
1337 海近し寐鴨をうちし筒の音
1338 天草の後ろに寒き入日かな
1339 日に映ずほうけし薄枯ながら
1340 旅にして申訳なく暮るゝ年

1341 凩の沖へとあるゝ筑紫潟
1342 うき除夜を壁に向へば影法師
1343 床の上に菊枯れながら明の春
1344 元日の山を後ろに清き温泉
1345 酒を呼んで酔はず明けたり今朝の春
1346 稍遅し山を背にして初日影
1347 駆け上る松の小山や初日の出
1348 甘からぬ屠蘇や旅なる酔心地
1349 温泉や水滑かに去年の垢
1350 此春を御慶もいはで雪多し

1351 正月の男といはれ拙に処す
1352 色々の雲の中より初日出
1353 初鴉東の方を新枕
1354 僧帰る竹の裡こそ寒からめ
1355 桐かれて洩れ来る月の影多し
1356 一尺の梅を座右に置く机
  正
    明治三十一年正月六日  愚陀仏庵
   子規庵 座右



熊本県飽託郡大江村四百一番地 夏目金之助より
下谷区上根岸町八十二番地 正岡常規へ



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