正岡子規へ送りたる句稿 その二



句稿 二  〔四十六句〕

明治二十八年十月

114 凩に裸で御はす仁王哉
115 吹き上げて塔より上の落葉かな (原句 吹き上げて塔より高き落葉かな)
116 五重の塔吹き上げられて落葉かな
117 滝壺に寄りもつかれぬ落葉かな
118 半途より滝吹き返す落葉かな
119 男滝女滝上よ下よと木の葉かな
120 時雨るゝや右手なる一の台場より

121 洞門に颯と舞ひ込む木の葉かな
122 御手洗や去ればこゝにも石蕗の花
123 寒菊やこゝをあるけと三俵
124 冬の山人通ふとも見えざりき
125 此枯野あはれ出よかし狐だに
126 閼伽桶や水仙折れて薄氷
127 凩に鯨潮吹く平戸かな
128 勢ひひく逆櫓は五丁鯨舟
129 枯柳芽ばるべしども見えぬ哉
130 茶の花や白きが故に翁の像

131 山茶花の折らねば折らで散りに鳧
132 時雨るゝや泥猫眠る経の上
133 凩や弦のきれたる弓のそり
134 飲む事一斗白菊折つて舞はん哉 (原句 飲一斗白菊折つて舞はん哉)
135 憂ひあらば此酒に酔へ菊の主
136 黄菊白菊酒中の天地貧ならず
137 菊の香や晋の高士は酒が好き (原句 菊の香や昔の人は酒が好き)
138 兵ものに酒ふるまはん菊の花 (原句 兵ものに酒給はらん菊の花)
139 紅葉散るちりゝちりゝとちゞくれて
140 簫吹くは大納言なり月の宴

141 紅葉をば禁裏へ参る琵琶法師
142 紅葉ちる竹縁ぬれて五六枚
143 麓にも秋立ちにけり滝の音
144 うそ寒や灯火ゆるぐ滝の音
145 宿かりて宮司が庭の紅葉かな
146 むら紅葉是より滝へ十五丁
147 雲処々岩に喰ひ込む紅葉哉
148 見ゆる限り月の下なり海と山
149 時鳥あれに見ゆるが知恩院
150 名は桜物の見事に散る事よ (原句 名は桜偖も見事に散る事よ)

151 巡礼と野辺につれ立つ日永哉
152 反橋に梅の花こそ畏しこけれ
153 初夢や金も拾はず死にもせず
154 柿売るや隣の家は紙を漉く
155 蘆の花夫より川は曲りけり
156 春の川故ある人を脊負ひけり (原句 秋の川故ある人を脊負ひけり)
157 草山の重なり合へる小春哉
158 時雨るゝや聞としもなく寺の屋根
159 憂き事を紙衣にかこつ一人哉



松山市二番町八番戸上野方 夏目金之助より
正岡常規へ



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