正岡子規へ送りたる句稿 その十七



句稿 十七  〔四十句〕

明治二十九年九月二十五日(金)

868 初秋の千本の松動きけり
869 鹹はゆき露にぬれたる鳥居哉
870 秋立つや千早古る世の杉ありて

871 見上げたる尾の上に秋の松高し
872 反橋の小さく見ゆる芙蓉哉
873 古りけりな道風の額秋の風
874 鴫立つや礎残る事五十
875 温泉の町や踊ると見えてさんざめく
876 碧巌を提唱す山内の夜ぞ長き
877 ひやひやと雲が来る也温泉の二階
878 玉か石か瓦かあるは秋風か
879 枕辺や星別れんとする晨
880 稲妻に行手の見えぬ広野かな

881 秋風や京の寺々鐘を撞く
882 明月や琵琶を抱へて弾きもやらず
883 廻廊の柱の影や海の月
884 明月や丸きは僧の影法師
885 酒なくて詩なくて月の静かさよ
886 明月や背戸で米搗く作右衛門
887 明月や浪華に住んで橋多し
888 引かで鳴る夜の鳴子の淋しさよ
889 無性なる案山子朽ちけり立ちながら
890 打てばひゞく百戸余りの砧哉

891 衣擣つて郎に贈らん小包で
892 鮎渋ぬ降り込められし山里に
893 鱸魚肥えたり楼に登れば風が吹く
894 白壁や北に向ひて桐一葉
895 柳ちりて長安は秋の都かな
896 垂れかゝる萩静かなり背戸の川
897 落ち延びて只一騎なり萩の原
898 蘭の香や聖教帖を習はんか (原句 蘭の香や聖教帖を習ふべし)
899 後に鳴き又先に鳴き鶉かな
900 窓をあけて君に見せうず菊の花

901 作らねど菊咲にけり折りにけり (原句 作らねど菊咲にけり活にけり)
902 世は貧し夕日破垣烏瓜
903 鶏頭や代官殿に御意得たし
904 長けれど何の糸瓜とさがりけり
905 禅寺や芭蕉葉上愁雨なし
906 無雑作に蔦這上る厠かな
907 仏には白菊をこそ参らせん

 二十九年九月二十五日    愚陀



熊本市合羽町二百三十七番地 夏目金之助より
下谷区上根岸町八十二番地 正岡常規へ



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