正岡子規へ送りたる句稿 その十六



句稿 十六  〔三十句〕

明治二十九年八月

838 すゞしさや裏は鉦うつ光琳寺
839 涼しさや門にかけたる橋斜め
840 眠らじな蚊帳に月のさす時は

841 国の名を知つておぢやるか時鳥
842 西の対へ渡らせ給ふ葵かな
843 淙々と筧の音のすゞしさよ
844 橘や通るは近衛大納言
845 朝貌の黄なるが咲くと申し来ぬ
846 紅白の蓮擂鉢に開きけり
847 涼しさや奈良の大仏腹の中
848 淋しくもまた夕顔のさかりかな
849 あつきものむかし大坂夏御陣
850 夕日さす裏は磧のあつさかな

851 午時の草もゆるがず照る日かな
852 琵琶の名は青山とこそ時鳥
853 就中大なるが支那の団扇にて
854 くらがりに団扇の音や古槐
855 夏痩せて日に焦けて雲水の果はいか
856 床に達磨芭蕉涼しく吹かせけり
857 百日紅浮世は熱きものと知りぬ
858 手をやらぬ朝貌のびて哀なり
859 絹団扇墨画の竹をかゝんかな
860 独身や髭を生して夏に籠る

861 夏書すとて一筆しめし参らする
862 なんのその南瓜の花も咲けばこそ
863 我も人も白きもの着る涼みかな
864 物や思ふと人の問ふまで夏痩せぬ
865 満潮や涼んで居れば月が出る
866 大慈寺の山門長き青田かな
867 唐茄子と名にうたはれて歪みけり

 明治二十九年八月      愚陀拝



熊本市光琳寺町 夏目金之助より
下谷区上根岸町八十二番地 正岡常規へ



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