正岡子規へ送りたる句稿 その十五



句稿 十五  〔四十句〕

明治二十九年七月八日(水)

798 海嘯去つて後すさまじや五月雨
799 かたまるや散るや蛍の川の上
800 一つすうと座敷を抜る蛍かな

801 竹四五竿をりをり光る蛍かな
802 うき世いかに坊主となりて昼寐する
803 さもあらばあれ時鳥啼て行く
804 禅定の僧を囲んで鳴く蚊かな
805 うき人の顔そむけたる蚊遣かな
806 筋違に芭蕉渡るや蝸牛
807 袖に手を入て反りたる袷かな
808 短夜の芭蕉は伸びて仕まひけり
809 もう寐ずばなるまいなそれも夏の月
810 短夜の夢思ひ出すひまもなし

811 仏壇に尻を向けたる団扇かな
812 ある画師の扇子捨てたる流かな
813 貧しさは紙帳ほどなる庵かな
814 午砲打つ地城の上や雲の峰 (原句 号砲や地城の上の雲の峰)
815 黒船の瀬戸に入りけり雲の峰
816 行軍の喇叭の音や雲の峰
817 二里下る麓の村や雲の峰
818 涼しさの闇を来るなり須磨の浦
819 涼しさの目に余りけり千松島
820 袖腕に威丈高なる暑かな

821 銭湯に客のいさかふ暑かな
822 かざすだに面はゆげなる扇子哉
823 涼しさや大釣鐘を抱て居る
824 夕立の湖に落ち込む勢かな
825 涼しさや山を登れば岩谷寺
826 吹井戸やぼこりぼこりと真桑瓜
827 涼しさや水干着たる白拍子
828 ゑいやつと蠅叩きけり書生部屋
829 吾老いぬとは申すまじ更衣
830 異人住む赤い煉瓦や棕櫚の花

831 敷石や一丁つゞく棕櫚の花
832 独居の帰ればむつと鳴く蚊哉
833 尻に敷て笠忘れたる清水哉
834 据風呂の中はしたなや柿の花
835 短夜を君と寐ようか二千石とらうか
836 祖母様の大振袖や土用干
837 玉章や袖裏返す土用干

 明治二十九年七月八日    愚陀拝



熊本市光琳寺町 夏目金之助より
下谷区上根岸町八十二番地 正岡常規へ



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