正岡子規へ送りたる句稿 その八



句稿 八  〔四十一句〕

明治二十八年十二月十四日(土)

389 定に入る僧まだ死なず冬の月
390 幼帝の御運も今や冬の月

391 寒月やから堀端のうどん売
392 寒月や薙刀かざす荒法師
393 寒垢離や王事もろきなしと聞きつれど
394 絵にかくや昔男の節季候
395 水仙は屋根の上なり煤払
396 寐て聞くやぺたりぺたりと餅の音
397 餅搗や小首かたげし鶏の面
398 衣脱だ帝もあるに火燵哉
399 君が代や年々に減る厄払
400 勢ひやひしめく江戸の年の市

401 是見よと松提げ帰る年の市
402 行年や刹那を急ぐ水の音
403 行年や実盛ならぬ白髪武者
404 春待つや云へらく無事は是貴人
405 年忘れ腹は中々切りにくき
406 屑買に此髭売らん大晦日
407 穢多寺へ嫁ぐ憐れや年の暮
408 白馬遅々たり冬の日薄き砂堤
409 山陰に熊笹寒し水の音
410 初冬や竹切る山の鉈の音

411 冬枯れて山の一角竹青し
412 炭焼の斧振り上ぐる嵐哉
413 冬木立寺に蛇骨を伝へけり
414 碧譚に木の葉の沈む寒哉
415 岩にたゞ果敢なき蠣の思ひ哉
416 炭竈に葛這ひ上る枯れながら
417 炭売の鷹括し来る城下哉
418 一時雨此山門に偈をかゝん
419 五六寸去年と今年の落葉哉
420 水仙白く古道顔色を照らしけり

421 冬籠り黄表紙あるは赤表紙
422 禅寺や丹田からき納豆汁
423 東西南北より吹雪哉
424 家も捨て世も捨てけるに吹雪哉 (原句 家も捨て人世を捨てたる吹雪哉)
425 つめたくも南蛮鉄の具足哉
426 山寺に太刀を頂く時雨哉
427 塚一つ大根畠の広さ哉
428 応永の昔しなりけり塚の霜
429 蛇を斬つた岩と聞けば淵寒し

 大政
明治二十八年十二月十四日   愚陀拝



松山市二番町八番戸上野方 夏目金之助より
下谷区上根岸町八十二番地 正岡常規へ



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