正岡子規へ送りたる句稿 その六



句稿 六  〔四十七句〕

明治二十八年十一月十三日(水)

272 喰積やこゝを先途と悪太郎
273 婆様の御寺へ一人桜かな
274 雛に似た夫婦もあらん初桜
275 裏返す縞のずぼんや春暮るゝ
276 普陀落や憐み給へ花の旅
277 土筆人なき舟の流れけり
278 白魚に己れ恥ぢずや川蒸気
279 白魚や美しき子の触れて見る
280 女郎共推参なるぞ梅の花

281 朝桜誰ぞや絽鞘の落しざし
282 其夜又朧なりけり須磨の巻
283 亡き母の思はるゝ哉衣がへ
284 便なしや母なき人の衣がへ
285 卯の花に深編笠の隠れけり
286 卯の花や盆に奉捨をのせて出る
287 細き手の卯の花ごしや豆腐売
288 時鳥物其物には候はず
289 時鳥弓杖ついて源三位
290 罌粟の花左様に散るは慮外なり

291 願かけて観音様へ紅の花
292 塵埃り晏子の御者の暑哉
293 銀燭にから紅ひの牡丹哉
294 旅に病んで菊恵まるゝ夕哉
295 行秋や消えなんとして残る雪
296 二十九年骨に徹する秋や此風
297 我病めり山茶花活けよ枕元
298 号外の鈴ふり立る時雨哉
299 病む人に鳥鳴き立る小春哉
300 廓燃無聖達磨の像や水仙花

301 大雪や壮夫羆を護て帰る
302 星一つ見えて寐られぬ霜夜哉
303 霜の朝袂時計のとまりけり
304 木枯の今や吹くとも散る葉なし
305 塵も積れ払子ふらりと冬籠り
306 人か魚か黙然として冬籠り
307 四壁立つらんぷ許りの寒哉
308 疝気持臀安からぬ寒哉
309 凩の上に物なき月夜哉
310 緑竹の猗々たり霏々と雪が降る

311 凩や真赤になつて仁王尊
312 初雪や庫裏は真鴨をたゝく音
313 我を馬に乗せて悲しき枯野哉
314 土佐坊の生擒れけり冬の月
315 ほろ武者の影や白浜月の駒
316 月に射ん的は栴檀弦走り
317 市中は人様々の師走哉
318 何となく寒いと我は思ふのみ

 二十八年十一月十三日



松山市二番町八番戸上野方 夏目金之助より
下谷区上根岸町八十二番地 正岡常規へ



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