正岡子規へ送りたる句稿 その四



句稿 四  〔五十句〕

明治二十八年十一月三日(日)

明治二十八年十一月二日河の内に至り近藤氏に
宿す。翌三日雨を冒して白猪唐岬に瀑を観る。
駄句数十。
 三日夜するす  愚陀仏

204 誰が家ぞ白菊ばかり乱るゝは
205 渋柿の下に稲こく夫婦かな
206 茸狩や鳥居の赤き小松山
207 秋風や坂を上れば山見ゆる
208 花芒小便すれば馬逸す
209 鎌倉堂野分の中に傾けり
210 山四方菊ちらほらの小村哉

211 二三本竹の中也櫨紅葉
212 秋の山静かに雲の通りけり
213 谷川の左右に細き刈田哉
214 瀬の音や渋鮎淵を出で兼る
215 赤い哉仁右衛門が脊戸の蕃椒
216 芋洗ふ女の白き山家かな
217 鶏鳴くや小村小村の秋の雨
218 掛稲や塀の白きは庄屋らし
219 四里あまり野分に吹かれ参りたり
220 新酒売る家ありて茸の名所哉

221 秋雨に行燈暗き山家かな
222 孀の家独り宿かる夜寒かな
223 客人を書院に寐かす夜寒哉
224 乱菊の宿わびしくも小雨ふる
225 木枕の堅きに我は夜寒哉
226 秋雨に明日思はるゝ旅寐哉
227 世は秋となりしにやこの蓑と笠
228 山の雨案内の恨む紅葉かな
229 鎌さして案内の出たり滝紅葉
230 朝寒や雲消て行く少しづゝ

231 絶壁や紅葉するべき蔦もなし
232 山紅葉雨の中行く瀑見かな
233 うそ寒し瀑は間近と覚えたり
234 山鳴るや瀑とうとうと秋の風
235 満山の雨を落すや秋の滝
236 大岩や二つとなつて秋の滝
237 水烟る瀑の底より嵐かな
238 白滝や黒き岩間の蔦紅葉
239 瀑五段一段毎の紅葉かな
240 荒滝や野分を斫て捲き落す

241 秋の山いでや動けと瀑の音
242 瀑暗し上を日の照るむら紅葉
243 むら紅葉日脚もさゝぬ瀑の色
244 雲来り雲去る瀑の紅葉かな
245 瀑半分半分をかくす紅葉かな
246 霧晴るゝ瀑は次第に現はるゝ
247 大滝を北へ落すや秋の山
248 秋風や真北へ瀑を吹き落す
249 絶頂や余り尖りて秋の滝
250 旅の旅宿に帰れば天長節

251 君が代や夜を長々と瀑の夢
252 長き夜を我のみ滝の噂さ哉
253 唐黍を干すや谷間の一軒家



松山市二番町八番戸上野方 夏目金之助より
下谷区上根岸町八十二番地 正岡常規へ



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