正岡子規へ送りたる句稿 その三



句稿 三  〔四十二句〕

明治二十八年十月末作

162 煩悩は百八減つて今朝の春
163 ちとやすめ張子の虎も春の雨
164 恋猫や主人は心地例ならず
165 見返れば又一ゆるぎ柳かな
166 不立文字白梅一木咲きにけり (原句 不立文字梅咲く頃の禅坊主)
167 春風や女の馬子の何歌ふ
168 春の夜の若衆にくしや伊達小袖
169 春の川橋を渡れば柳哉
170 うねうねと心安さよ春の水

171 思ふ事只一筋に乙鳥かな
172 鶯や隣の娘何故のぞく
173 行く春を鉄牛ひとり堅いぞや
174 春の雨鶯も来よ夜着の中
175 春の雨晴れんとしては烟る哉
176 咲たりな花山続き水続き
177 桜ちる南八男児死せんのみ
178 鵜飼名を勘作と申し哀れ也
179 時鳥たつた一声須磨明石
180 五反帆の真上なり初時鳥 (原句 五反帆の真上なりけり時鳥)

181 裏河岸の杉の香ひや時鳥
182 猫も聞け杓子も是へ時鳥
183 湖や湯元へ三里時鳥
184 時鳥折しも月のあらはるゝ
185 五月雨ぞ何処まで行ても時鳥
186 時鳥名乗れ彼山此峠
187 夏痩の此頃蚊にもせゝられず
188 棚経や若い程猶哀れ也
189 御死にたか今少ししたら蓮の花
190 百年目にも参うず程蓮の飯

191 蜻蛉や杭を離るゝ事二寸
192 轡虫すはやと絶ぬ笛の音
193 谷深し出る時秋の空小し
194 雁ぢやとて鳴ぬものかは妻ぢやもの
195 鶏頭に太鼓敲くや本門寺
196 朝寒の鳥居をくゞる一人哉
197 稲刈りてあないたはしの案山子かも
198 時雨るや裏山続き薬師堂
199 時雨るや油揚烟る縄簾
200 海鼠哉よも一つにては候まじ (原句 やよ海鼠よも一つにては候まじ)

201 淋しいな妻ありてこそ冬籠
202 弁慶に五条の月の寒さ哉
203 行春や候二十続きけり (原句 妹が文候二十続きけり)



松山市二番町八番戸上野方 夏目金之助より
正岡常規へ




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