夏目漱石俳句集

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zoom RSS 夏目漱石俳句集 <制作年順> 明治28年-3 (281〜390)

<<   作成日時 : 2009/11/23 09:58   >>

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夏目漱石俳句集


<制作年順>





明治28年(1895年)

281 朝桜誰ぞや絽鞘の落しざし
282 其夜又朧なりけり須磨の巻
283 亡き母の思はるゝ哉衣がへ
284 便なしや母なき人の衣がへ
285 卯の花に深編笠の隠れけり
286 卯の花や盆に奉捨をのせて出る
287 細き手の卯の花ごしや豆腐売
288 時鳥物其物には候はず
289 時鳥弓杖ついて源三位
290 罌粟の花左様に散るは慮外なり

291 願かけて観音様へ紅の花
292 塵埃り晏子の御者の暑哉
293 銀燭にから紅ひの牡丹哉
294 旅に病んで菊恵まるゝ夕哉
295 行秋や消えなんとして残る雪
296 二十九年骨に徹する秋や此風
297 我病めり山茶花活けよ枕元
298 号外の鈴ふり立る時雨哉
299 病む人に鳥鳴き立る小春哉
300 廓燃無聖達磨の像や水仙花

301 大雪や壮夫羆を護て帰る
302 星一つ見えて寐られぬ霜夜哉
303 霜の朝袂時計のとまりけり
304 木枯の今や吹くとも散る葉なし
305 塵も積れ払子ふらりと冬籠り
306 人か魚か黙然として冬籠り
307 四壁立つらんぷ許りの寒哉
308 疝気持臀安からぬ寒哉
309 凩の上に物なき月夜哉
310 緑竹の猗々たり霏々と雪が降る

311 凩や真赤になつて仁王尊
312 初雪や庫裏は真鴨をたゝく音
313 我を馬に乗せて悲しき枯野哉
314 土佐坊の生擒れけり冬の月
315 ほろ武者の影や白浜月の駒
316 月に射ん的は栴檀弦走り
317 市中は人様々の師走哉
318 何となく寒いと我は思ふのみ
319 我脊戸の蜜柑も今や神無月
320 達磨忌や達磨に似たる顔は誰

321 芭蕉忌や茶の花折つて奉る
322 本堂へ橋をかけたり石蕗の花
323 乳兄弟名乗り合たる榾火哉
324 かくて世を我から古りし紙衣哉
325 我死なば紙衣を誰に譲るべき
326 橋立の一筋長き小春かな
327 武蔵下総山なき国の小春哉
328 初雪や小路へ入る納豆売
329 御手洗を敲いて砕く氷かな
330 寒き夜や馬は頻りに羽目を蹴る

331 来ぬ殿に寐覚物うけ火燵かな
332 酒菰の泥に氷るや石蕗の花
333 古綿衣虱の多き小春哉
334 すさましや釣鐘撲つて飛ぶ霰
335 昨日しぐれ今日又しぐれ行く木曾路
336 鷹狩や時雨にあひし鷹のつら
337 辻の月座頭を照らす寒さ哉
338 枯柳緑なる頃妹逝けり
339 枯蓮を被むつて浮きし小鴨哉
340 京や如何に里は雪積む峰もあり

341 女の子発句を習ふ小春哉
342 ほのめかすその上如何に帰花
343 恋をする猫もあるべし帰花
344 一輪は命短かし帰花
345 吾も亦衣更へて見ん帰花
346 太刀一つ屑屋に売らん年の暮
347 志はかくあらましを年の暮
348 長松は蕎麦が好きなり煤払
349 むつかしや何もなき家の煤払
350 煤払承塵の槍を拭ひけり

351 懇ろに雑炊たくや小夜時雨
352 里神楽寒さにふるふ馬鹿の面
353 夜や更ん庭燎に寒き古社
354 客僧の獅噛付たる火鉢哉
355 冬の日や茶色の裏は紺の山
356 冬枯や夕陽多き黄檗寺
357 あまた度馬の嘶く吹雪哉
358 嵐して鷹のそれたる枯野哉
359 あら鷹の鶴蹴落すや雪の原
360 竹藪に雉子鳴き立つる鷹野哉

361 なき母の忌日と知るや網代守
362 静かなる殺生なるらし網代守
363 くさめして風引きつらん網代守
364 焚火して居眠りけりな網代守
365 賭にせん命は五文河豚汁
366 河豚汁や死んだ夢見る夜もあり
367 夕日寒く紫の雲崩れけり
368 亡骸に冷え尽したる煖甫哉
369 あんかうや孕み女の釣るし斬り
370 あんかうは釣るす魚なり縄簾

371 此頃は女にもあり薬喰
372 薬喰夫より餅に取りかゝる
373 落付や疝気も一夜薬喰
374 乾鮭と並ぶや壁の棕櫚箒
375 魚河岸や乾鮭洗ふ水の音
376 本来の面目如何雪達磨
377 仲仙道夜汽車に上る寒さ哉
378 西行の白状したる寒さ哉
379 温泉をぬるみ出るに出られぬ寒さ哉
380 本堂は十八間の寒さ哉

381 愚陀仏は主人の名なり冬籠
382 情けにはごと味噌贈れ冬籠
383 冬籠り小猫も無事で罷りある
384 すべりよさに頭出るなり紙衾
385 両肩を襦袢につゝむ衾哉
386 合の宿御白い臭き衾哉
387 水仙に緞子は晴れの衾哉
388 土堤一里常盤木もなしに冬木立
389 定に入る僧まだ死なず冬の月
390 幼帝の御運も今や冬の月



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